離婚の財産分与と退職金【まだもらっていない将来のお金も対象】
離婚時の財産分与では、「退職金」も対象となることをご存じでしょうか。
「まだ受け取っていない将来のお金だから関係ない」「すでに受け取って使ってしまった」と諦めてしまうケースもありますが、退職金は「在職中の労働の対価=賃金の後払い」と考えられており、婚姻期間に相当する部分は財産分与の対象となります。
このページでは、退職金を財産分与する際の基本的な考え方と、具体的な計算方法について解説します。
1. なぜ退職金も財産分与の対象になるのか?
退職金は、毎月の給与と同じく「労働の対価」です。 そして、その労働は、配偶者の支えがあってこそ成り立っていたと法的には考えられます。
したがって、婚姻期間(結婚していた期間)に相当する分の退職金は、「夫婦が協力して築いた共有財産」とみなされ、財産分与の対象となるのです。
2. 財産分与の計算方法
退職金の計算は、すでに受け取ったか、まだ受け取っていないかで方法が異なります。
1. すでに退職金を受け取っている場合
すでに退職金を受け取っている場合は、比較的単純です。 受け取った退職金から、婚姻期間に相当する部分を計算します。
(計算例) ・受け取った退職金額:2,000万円 ・総勤務期間:40年 ・婚姻期間:20年
2,000万円 × (20年 ÷ 40年) = 1,000万円
この1,000万円が「共有財産」となり、原則として半分(この場合は500万円)を分与することになります。
ただし、退職金がすでに預貯金や他の資産(家など)に形を変えている場合や、生活費として使われて残っていない場合は、計算が複雑になります。
2. まだ退職金を受け取っていない(在職中)の場合
離婚の時点ではまだ相手が在職中で、退職金を受け取っていない場合の計算が最も一般的です。
この場合、「離婚(または別居)の時点」で、仮に自己都合で退職したらいくら退職金が支給されるか、という金額を基準に計算します。
(計算例) ・総勤務期間(別居時点):25年 ・婚姻期間:15年 ・別居時点で自己都合退職した場合の退職金額:1,000万円
1,000万円 × (15年 ÷ 25年) = 600万円
この600万円が「共有財産」となり、原則として半分(この場合は300万円)を分与することになります。
3. 計算の基準日と支払い方法
<h4>計算の基準は「別居時」</h4>
財産分与の基準は、原則として「別居した日」となります。 したがって、まだもらっていない退職金も、「別居した日に退職したらいくらだったか」を基準に計算するのが一般的です。
<h4>どうやって支払うか</h4>
将来もらう退職金を分ける場合、支払い方法は主に2つあります。
- 離婚時にすぐ支払う (例のケースなら、夫が妻に300万円を「離婚時」に支払う) この方法が、後々のトラブルを防ぐために最も推奨されます。
- 将来、退職金が支給された時に支払う (「将来、退職金が支給されたら、そのうちの300万円を支払う」と約束する) この方法は、将来相手が本当に支払ってくれるか不透明な点や、相手が転職してしまうリスクがあるため、「公正証書」に必ず残しておく必要があります。
4. 退職金額がわからない場合の対処法
この計算をするためには、相手の勤務先の「退職金規程(規定)」を知り、計算の基準額を算出する必要があります。
しかし、相手が協力的でない場合、これらの情報を開示してくれないことも多いです。
その場合は、弁護士に依頼して「弁護士会照会制度」を利用したり、調停や裁判を通じて裁判所から相手の勤務先に情報を開示させたりする「調査嘱託」という手続きが必要になります。
まとめ
退職金は、離婚後の生活設計において非常に大きな財産となり得ます。 「まだもらっていないから」と諦める必要はまったくありません。
ただし、計算方法が複雑であり、相手の協力も必要なため、財産分与の中でも特に専門的な知識が求められる分野です。 進め方に不安がある場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
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