夫婦の形は多様化する?「オープンマリッジ」とは何か、離婚との関連性を解説

近年、結婚や夫婦の形に対する価値観は多様化しています。従来の「一夫一婦制」という枠にとらわれず、様々なパートナーシップの形が模索される中で、「オープンマリッジ」という言葉を耳にする機会も増えました。

特に、人気YouTuberのヒカルさんと進撃のノアさんが、お互いの合意のもとで「オープンマリッジ」という関係性を公表し、大きな注目を集めています。彼らの事例は、夫婦関係の多様性について考えるきっかけを与えてくれます。

しかし、「オープンマリッジ」とは具体的にどのような関係性を指し、法的にはどのように解釈されるのでしょうか?また、もしオープンマリッジの夫婦が離婚を選択した場合、一般的な離婚と比べてどのような違いや注意点があるのでしょうか。

この記事では、オープンマリッジの基本的な定義から、その法的・離婚時の注意点までを詳しく解説します。


1. 「オープンマリッジ」とは何か?基本的な定義と特徴

「オープンマリッジ」とは、夫婦がお互いの合意の上で、配偶者以外のパートナーとの関係も許容する結婚の形態を指します。これは、一般的な一夫一婦制における「貞操義務」の概念とは一線を画すものです。

オープンマリッジの主な特徴

  • 夫婦間の合意と透明性: 最も重要なのは、夫婦双方の明確な合意と、関係性についての透明性です。どちらか一方が秘密裏に別の関係を持つ「浮気」とは根本的に異なります。
  • コミュニケーションの重視: 複雑な関係性を維持するためには、夫婦間の深いコミュニケーションと、ルールや境界線の明確な設定が不可欠とされます。
  • 多様な形: オープンマリッジと一口に言っても、どこまでの関係性を許容するかは夫婦によって様々です。精神的な交流のみを許すケースもあれば、肉体関係を含むケースもあります。

似て非なる関係性との違い

  • 浮気・不倫: 夫婦の合意がない点で、オープンマリッジとは全く異なります。
  • ポリアモリー: 複数の人と同時に恋愛関係を結ぶことを指し、感情的なつながりを含むことが多いです。オープンマリッジは、必ずしもポリアモリーとは限りません。
  • スワッピング(パートナー交換): 特定のパートナーとの間で夫婦を交換する行為であり、オープンマリッジの一部となり得ることもありますが、その定義は限定的です。

2. ヒカル&進撃のノアさんの事例に学ぶ「オープンマリッジ」

人気YouTuberのヒカルさんと進撃のノアさんは、公に自身の関係性がオープンマリッジであることを表明しています。彼らの発言から読み取れるのは、以下の点です。

  • 自由な関係性の追求: 互いの価値観を尊重し、従来の結婚の枠にとらわれない自由なパートナーシップを求めていること。
  • 深い信頼とコミュニケーション: 表面的な関係ではなく、深い信頼関係と、複雑な状況を乗り越えるための継続的なコミュニケーションが基盤にあること。
  • 透明性の確保: 世間に公表することで、関係性を隠すことなく、嘘のない生き方を実践していること。

彼らの事例は、オープンマリッジが単なる「自由奔放な関係」ではなく、夫婦間の強固な合意と信頼、そして高いレベルのコミュニケーション能力によって成り立っていることを示唆しています。


3. オープンマリッジが「法的に」意味するもの

日本において、オープンマリッジという概念が法的に明文化されているわけではありません。日本の民法は、婚姻している夫婦に**「貞操義務」**を課しており、夫婦以外の者と肉体関係を持つことは原則として不貞行為とみなされます。

法的な解釈の注意点

  • 貞操義務の放棄は原則不可: 夫婦間で「オープンマリッジなので、他の人との肉体関係を許す」という合意があったとしても、法律上、貞操義務を完全に放棄できるとは限りません。
  • 不貞行為と判断されるリスク: 万が一、夫婦の一方がオープンマリッジの合意の範囲を超えた行為をした場合、あるいは第三者がオープンマリッジの合意を知らずに肉体関係を持った場合、法的には不貞行為とみなされ、慰謝料請求の対象となる可能性があります。
  • 「慰謝料請求権の放棄」の有効性: 夫婦間で事前に「オープンマリッジだから慰謝料は請求しない」と合意していたとしても、その合意が常に法的に有効と認められるとは限りません。特に、合意内容が曖昧だったり、一方が真意でなかったりした場合は争点となりえます。

つまり、社会的な夫婦の形としてオープンマリッジを選択することは可能ですが、それが直ちに法的な責任を免除するものではないという理解が必要です。


4. オープンマリッジの夫婦が「離婚」する際の法的課題と注意点

オープンマリッジを選択していた夫婦が離婚する場合、基本的な離婚手続きや条件は、通常の夫婦と大きく変わりません。しかし、オープンマリッジ特有の複雑な状況が、離婚交渉に影響を与える可能性があります。

法的課題と注意点

  1. 離婚原因:
    • 民法で定められた離婚原因(不貞行為、悪意の遺棄など)は、オープンマリッジであっても適用されます。
    • もしオープンマリッジの合意があったとしても、その合意の範囲を超えた行為や、合意内容が曖昧なために一方が不貞行為と主張した場合、離婚原因として争われる可能性があります。
  2. 慰謝料:
    • 最も複雑な争点となりやすいのが慰謝料です。
    • オープンマリッジの合意があったとしても、前述の通り法的に貞操義務の放棄とはみなされない可能性があるため、第三者との関係が不貞行為と判断され、慰謝料請求の対象となるリスクがあります。
    • 慰謝料請求を避けるためには、夫婦間の合意内容を極めて明確にし、それを書面(離婚協議書や公正証書)に残すことが重要です。
  3. 財産分与・養育費・親権:
    • これらは、オープンマリッジであるかどうかにかかわらず、通常の離婚と同様に民法に基づき判断されます。
    • 夫婦の協力によって築かれた財産の公平な分与、子どもの利益を最優先とした親権・養育費の取り決めが必要です。
    • 特に子どもがいる場合、子どもの福祉を損なわないよう、関係性の多様性が子どもに与える影響にも配慮が必要です。
  4. 離婚協議書・公正証書の重要性:
    • オープンマリッジの夫婦が離婚する際は、通常の離婚以上に、夫婦間の合意内容(特に貞操義務の範囲、慰謝料請求権の有無、共有財産の取り扱いなど)を明確な書面に残し、可能であれば公正証書として作成することが非常に重要です。これにより、将来の無用な争いを防ぐことができます。

まとめ:多様化する夫婦の形と、変わらない法的責任

ヒカルさんと進撃のノアさんの事例は、夫婦の形が多様化している現代において、それぞれの夫婦が最適なパートナーシップを模索していることを示しています。オープンマリッジは、夫婦間の深い信頼とコミュニケーション、そして明確な合意に基づいて成立する、一つの選択肢と言えるでしょう。

しかし、いかなる夫婦の形を選択したとしても、日本における法的な婚姻関係には「貞操義務」が存在し、それに伴う責任が伴うことを忘れてはなりません。特に、離婚という最終的な局面では、オープンマリッジの合意があったとしても、法的な解釈が通常の婚姻関係と同様に行われ、慰謝料などの問題が発生しうることを理解しておく必要があります。

夫婦の形が多様化する時代だからこそ、結婚する際に夫婦間で深く話し合い、万が一の離婚に備えて法的な知識を身につけ、専門家のアドバイスを求めることの重要性は、これまで以上に高まっていると言えるでしょう。